明くる日。空は薄っすらと雲を引いていたけれど、溜まっていたシーツをすべて洗濯して、気持ちよくバルコニーを埋め尽くす。もちろんベランダ菜園の水やりも、わたしの大事な仕事。

 それから。ひとつひとつ思い出してみた。由里子さんが初めてセルドォルに高津さんを連れて来た日のこと。海鳴り亭で彼の歓迎会をした、あの夜のこと。
 
 由里子さんは。高津さんの目的がわたしだと最初から承知の上だった。彼の言葉を本気にするなと言ったことも、渉さんを信じろと言ったことも、あれは高津さんが起こすだろう行動を見越しての言葉だった。
 ホームセンターで再会した時の高津さんを思い返せば、辻褄が合ってしまう。彼女は渉さんとの確執を知っていて、わたしに彼を近付けた。だから渉さんは。由里子さんが高津さん側の人間だから関係を断ち切らせた・・・?

 本当のことは何も分からない。
 由里子さんと高津さんの関係。渉さんが静羽さんを見殺しにしたかのような。彼の冷たい憎悪。わたしが高津さんに拘わることを赦さない、渉さんの・・・真意。

 すべてが。
 白でも黒でもない。 
 答えがあるとして。
 誰にとっても正解は無いのかも知れない。

 
 それでも自分が信じるものを受け容れるだけ。それを信じて愛するだけ。その覚悟と勇気が。今のわたしには必要なだけ。