「オレが認めるワケねーだろ」

 バーカ、と藤君は鼻を鳴らす。

「あんたみたいな甘ちゃん、話になんねーよ。何なら今すぐ出てけ」

 本当にいつも。潔く首をスッパリと斬り落とされる感じで言い切られている気が。

「若頭代理が惚れてる女じゃなけりゃ、とっくに海に沈めてるっつの」

 上から冷ややかにわたしを睨め付けると、早く来いよ、と背を向け行ってしまった。

「・・・・・・・・・」

 “若頭代理が惚れてる・・・” 
 思わない藤君の言葉が耳に残って。いつまでもリフレインしていて。
 
 ・・・少しは己惚れてみてもいいのでしょうか。
 もう一度、月を見上げて。わたしもゆっくり背を向けた。