「・・・オレに八つ当たりするなよ? 代理の命令じゃしょうがねーだろ」

 きつい眼差しで、掌のスマホをじっと見据えるわたしに藤君が溜息を吐く。

「あ・・・ううん。大丈夫」

 上の空で返答しながら。ピースを填めていく。

 由里子さんと高津さんは、元からの知り合い。そこに渉さんも関係している。高津さんと渉さんの間には・・・何か因縁があって。・・・わたしを守るため?

 その答えに行き着いた時、思わず藤君にそのままをぶつけてしまった。

「・・・ねぇ藤君。高津さんて組のひとなの?」

 藤君は一瞬、言葉を呑んだように見えた。

「・・・さあね。知らない」

 藤君は知っている。高津晶というひとが、何者なのかを。けれど彼は、絶対に口を割らない。

 少しだけ組み上がった、色のないパズル。もっと冷静に考えてみよう。まだ見えて来るものも、あるかも知れない。

 変なこと訊いてごめんね、とわたしは自然の笑顔を向ける。何もこの手に無い訳じゃないのだから。糸口はきっとどこかに在る、と小さな希望の焔が胸に灯った。

「そう言えば代理からの伝言」

 藤君がどことなく居心地が悪そうな表情で頭を掻きながら。

「そのスマホからなら、いつでも掛けて来ていいってさ」

 大人の飴と鞭の使い分けって。ちょっと敵わないって素直に完敗した。
 ・・・貴方ってひとは、渉さん。甘苦さが広がり、困ったような笑みを浮かべて、わたしは藤君を見上げる。

「それなら毎日、電話責めにしちゃうから・・・!」