ひとしきり荒れ狂った嵐を過ぎたように。正午近くになって、渉さんは漸くわたしを解き放つ。最後のほうは彼自身がというより、ただ執拗にわたしだけ思考能力を奪われ、愛撫され続けた。
汗で額に張り付いた長い髪を、渉さんの指が少し不器用に避けて。そのまま頬をなぞる。わたしは力無くベッドに沈み込み、目を閉じてされるがままに。
「・・・きつかったか」
労わられた響きに、大丈夫です、と微笑んだつもりだったけれど。腕一本動かすのも苦労がいりそうな気怠さに笑えていたのかどうか。
「起きられるなら、風呂に入るぞ」
「はい・・・」
スプリングが軋んで、傍に在った体温が遠ざかる。ふと目を開けると刺青に彩られた彼の背中が映りこんだ。
不意に。渉さんが一生背負うそれが、イエスキリストの背負う十字架のように思えて。
貴方は、選んだ道から外れない事を自らに宿命づけた、とても厳しいひと。その背の“十字”に懸けて、自らの信念を貫くひと。聖人となんら違いの無い純粋な正義で。
ゆるゆると深呼吸を逃す。
彼を信じる。・・・それがわたしの十字架。愛すると決めた時からの。
躰を起こし、顔を上げて肩に滑る髪を指で払う。水音が跳ねるバスルームに渉さんを追いながら。
考えなければ。
これからのこと。
突如、欠けた世界をどう。わたしは紡いでいけばいいのか、を。
汗で額に張り付いた長い髪を、渉さんの指が少し不器用に避けて。そのまま頬をなぞる。わたしは力無くベッドに沈み込み、目を閉じてされるがままに。
「・・・きつかったか」
労わられた響きに、大丈夫です、と微笑んだつもりだったけれど。腕一本動かすのも苦労がいりそうな気怠さに笑えていたのかどうか。
「起きられるなら、風呂に入るぞ」
「はい・・・」
スプリングが軋んで、傍に在った体温が遠ざかる。ふと目を開けると刺青に彩られた彼の背中が映りこんだ。
不意に。渉さんが一生背負うそれが、イエスキリストの背負う十字架のように思えて。
貴方は、選んだ道から外れない事を自らに宿命づけた、とても厳しいひと。その背の“十字”に懸けて、自らの信念を貫くひと。聖人となんら違いの無い純粋な正義で。
ゆるゆると深呼吸を逃す。
彼を信じる。・・・それがわたしの十字架。愛すると決めた時からの。
躰を起こし、顔を上げて肩に滑る髪を指で払う。水音が跳ねるバスルームに渉さんを追いながら。
考えなければ。
これからのこと。
突如、欠けた世界をどう。わたしは紡いでいけばいいのか、を。



