「わたしは・・・・・・、渉さんの、もの・・・です」

 虚ろに呟く。

 もしも。
 わたしが頑なに嫌だと拒んだなら。

 きっと今度こそ、貴方は容赦なくわたしを引き離した。
 二度と逢うことは無い、と貴方はわたしを置いてこの部屋を出て行く。

 だから選ばせたの、わたしに。
 自分の傍に居たいなら絶対の服従を誓え、と。誓いを二度と違えるなと。

 楔を打ち込んで。
 引き摺るほど重い鎖を、首に繋いで。

「分かっているなら間違えるな」

 顎の下を捕らえたまま、渉さんはゆっくりと自分から顔を寄せた。

「・・・俺だけ信じていろ。他の何も・・・お前は見なくていい」

 角度を変えて口を塞がれる刹那、低く漏れた命令(ことば)には。何かを押し殺したような気配が纏い付いていた。
 



 渉さんはその後ずっと。殺しきれないものを、わたしに声を上げさせることで昇華させたがった。手足の自由を奪い、一方的に。支配的なのはいつもと変わらないのにどこか、余裕がない気がした。
 独裁的にわたしを抱きながらどこか。・・・すがられている気がした。

 ・・・渉さん。貴方のほうが、よっぽど苦しそうに。わたしには見えたんです・・・・・・。