「え、誰の家……?」
「おれんち」
「えっ」
一条くんの家って、私の家の近くじゃなかったっけ。
ここはまるで真逆の方向だ。
「うそ!だってこの前」
「ああ、あれがうそ」
「ぇえっ!?」
一条くんに引っ張られるようにして、一緒にその家に入ってしまう。
上手く言えないけれど、その空間からは一条くんと同じにおいがした。
一条くんは嘘をついて、あのとき一緒に帰ってくれたのだと初めて知った。
どうしてそんなこと、してくれたんだろう。
あれこれ考えていたら、一条くんの手から私の腕が解放された。
結構強く握られていたのに、痣が残るようなことはなかった。
「青木から聞いた。アンタ、1人で何しようとしてた」
怒ったように一条くんに問い詰められる。
千尋、どうして一条くんに……。
「どうせ大学に行ってなんとかっていう男に直接話つけようとか考えてたんだろ」
「う……」
すべてお見通しだ。
だってそれしか、私には出来ないと思ったから。
「危ないだろ!上手くいくかもわからないのに無茶すんな!」
「!」
こんなに怒った一条くんは初めて見る。
自分でも、上手くいくかはわからないって思ってた。
だけど失敗して、千尋がもっと酷い目にあうかもしれないことを考えていなかった。
感情だけで突っ走ってしまった自分が嫌になる。
「でも、じゃあどうしたら」
「ったく……」
一条くんは面倒くさそうにため息をつくと、私の両手を拾い上げた。
向かい合わせに立って、ぎゅっと手を握られる。
この体勢には覚えがあった。
「え、ちょっと一条くん?」
「うるさい。離すなよ」
「わ!」
すぐ目の前にいる一条くんが目を閉じた。
その瞬間、眩しい光が2人を包み込む。
考える間もなく、眩しさに耐えきれずに私も目を閉じる。
次に、身体全体が浮遊感に襲われる。内臓がふわっと宙に浮くような感じがして、その次の瞬間には———。

