少しワクワクした気持ちで迎えた放課後、屋上へ向かう足取りは軽かった。
もしかしたら今から、世界中を震撼させるような手品に出会えるかもしれないのだ。
サインでももらっておこうか。名前知らないけど。
そんな浮かれた気分で屋上のドアノブを回してみると、鍵がかかっていた。
まだ来てないのかと思い、いつも通りヘアピンを使って器用に鍵を開けて扉を開ける。
「遅かったな」
するとなんと、男の子は既に来て座り込んでいた。
「ちょっと、来てたんならわざわざ鍵かけないでよ」
屋上側からは鍵をつかわずにツマミを回して開け閉めが出来るようになっている。
私が来ることがわかっているのに、わざわざ鍵をかけなおしたのかと思ってそう文句を言った。
だけど返ってきた言葉は、不思議なものだった。
「俺、ここの鍵の開け方知らない」
「……え?じゃあ」
じゃあどうやって今ここにいるの。
そう言いかけて、ここに来た意味を思い出した。
………想像していたよりもずっと、なにかすごいトリックなのかもしれない。
「どうせ知らないだろうから言っとく。俺は4組の一条澪(いちじょうみお)」
「あ!私は1組の」
「知ってる。広野真子だろ」
「え、なんで知ってるの?話したことないよね」
「なんでって……。アンタ目立つから」
嫌でも目につくんだよと言われ、そうなのかと首をかしげた。
それより、ようやくこの人の名前をゲット出来たのだ。4組なら教室が離れているから、知らなくても無理ないなと思った。同時に、"マジシャン一条"って響きも悪くないなあ、なんて。
「今から俺は、昼休みにアンタに見られたことをもう一回する」
「えっ!見せてくれるの?ネタは自分で見て考えろってこと!?」
「……ちょっと何言ってるのかわからないんだけど」
「う、ううん、ううんいいの!気にしないで全力を尽くして!」
不審そうな顔をする一条くんは、面倒くさそうに立ち上がった。
そしてゆっくりと私の前まで歩いてきたと思ったら、ふいに手をぎゅっと握られた。

