「産まれたときからお父さんがいなくて、だけど寂しいなんて思ったことなかったんだよ。お母さんと幸せに暮らしてこれてるって思ってた。だけどそれって、私が勝手にそう思ってただけで……」
情けない、乾いた笑いが口から漏れ出した。
「お母さんは、そうじゃなかったのかなって………わっ!?」
突然、頭が重たくなった。
見ると一条くんが、私の頭の上に手を乗せていた。
びっくりして目を見開いて顔を見ると、ぶすっとした顔をしながら、頭に乗せた手をポンポンと弾ませてくる。
それが一条くんなりの優しさなのだと気付いたら、ちょっとだけ、涙が出そうになった。
「……力強いよ、一条澪くん」
「うるせ」
不器用すぎる。
でも、その不器用さが今はなんだか心地よかった。
「してやるよ、協力」
「!」
がばっと顔をあげて、そっぽを向いている横顔を見つめた。
目を合わせてはくれないけれど、言ってくれた言葉はとても力強かった。
「アンタがそれですっきりするんなら、いいんじゃねーの」
「あ、ありがとう!一条くん、ありがとう!」
「べ、別に。アンタも大概大変そうだし……」
「でさ、これを機にそれやめない?」
「あ?どれ」
きょとんとした顔に、ぐっと近付いてみる。案の定、同じだけ後ずさりされてしまった。
「私、広野真子っていうんだけど」
「……めんどくせぇ」
言う通りの心底面倒そうな顔を隠しもせずに一条くんはそう言った。
反対に、私はにんまりと笑う。
協力ついでに、ちょっとお願いをしてみようと思ったのだ。
「……広野、サン」
「はいっ!」
一条くんの特大溜息が飛び出した。

