4月5日。
私が18歳になったあの日は火曜日で、だけど春休みだったから学校には行かなかった。
ちょっと遅めに目を覚ましてリビングに行くと、お母さんはまず「誕生日おめでとう」と声をかけてくれたことをよく覚えてる。
朝食を食べ終えて、私は出掛ける準備をした。夕方まで友達と遊ぶ約束をしていたからだ。
それなら夜に一緒にお祝いしよう、とお母さんは言った。高校3年生にもなっていいよ、という私に、お母さんはよくないと言って聞かなかった。
夕方になって家に帰ると、テーブルの上にはケーキと料理が並んでて、おいしそうって急いで手を洗いにいって。
お母さんは喜ぶ私を見て嬉しそうにしてた。それを見て、やっぱりお祝いしてもらってよかったなあって私は思って。
普通の、幸せな日だったのだ。
「だから、何かあったとすれば私が遊びにいってた間だと思うんだけど」
「まあそう考えるのが妥当か」
「……何もなくて、私の思い違いだったならそれでいいの。深読みしすぎたんだって諦める。でももし何かあって、お母さんがいなくなった理由がわかれば……」
「それを確認しに行きたいってか」
「ほんとに、ほんとにどこか知らないところで幸せになってるならいいよ。だけどもし何か事件とかに巻き込まれてたら……」
そう言いながら、自分でもよくわからなくなってきていた。
一条くんの表情を見てもわかる。明らかに考えすぎだ。ちょっと普通じゃないくらいに。
「……ううん、違う、多分。こんな理由じゃないんだ」
顔をあげていられずに、屋上の地面に視線を落とした。
手を当てると、ひんやりと冷たい感触がした。
「認めたくないだけなんだよ。お母さんが、自分を見捨ててどこかに行っちゃったこと」
「………」
初めて口に出した。
心の奥でずっと消化出来ずにいた気持ちを。
この手紙を読んだその時から、本当はずっとこう思っていたんだ。

