「なんだ?手紙?」
「うん、読んでみて」
それは、お母さんが残していった手紙だ。
一条くんはゆっくりと、文字を目で追い始めた。
―――
真子へ
この手紙を読んでるってことは、
お母さんは真子の前からいなくなる
決心をしたのかな。
突然いなくなってごめんね。
お母さんは、誰も知り合いが
いない街で、ある人と一緒に
新しい人生をスタートさせる
ことにしました。真子を残して
行くこと、どうか許してください。
おばあちゃんに、真子のこれからを
頼んでいます。この手紙を読んだら
一度おばあちゃんの家に
行ってみてください。
お母さんはこれから、新しい場所で、
幸せに生きていきます。
もうここへは、帰りません。
真子も、どうか元気で、幸せに。
ごめんなさい。
この手紙を書いている今日は、
2016年4月5日です。
真子の18歳の誕生日でした。
この日のことを、
お母さんはきっと一生忘れません。
ありがとう。
―――
「これ………」
手紙を読み終えた一条くんの声は、少し掠れているように聞こえた。
「お母さんが家を出ていったのは、3ヶ月前なんだ。夏休みに入る前だった」
「……この手紙が残してあったのか?」
首を縦に振って、手紙の表面を指でなぞった。
一度濡れたような跡が残る部分を、一条くんがじっと見ているような気がした。
何度も何度も読み返した。
手紙の内容は、一字一句違うことなく頭の中に記憶されている。
「……おかしいんだ」

