「よう」
放課後、屋上へと向かうと、扉の前に一条くんが座っていた。私に気付くと軽く手をあげて、だるそうに腰をあげた。
「今日は屋上に入らずに待ってたんだ?」
「だから俺鍵の開け方知らないし。過去から戻ってくるところ見られたらやばいから、誰もいないここ使ってただけ」
スカートのポケットから少し曲がったヘアピンを取り出して、鍵穴へと差し込んだ。
その様子を一条くんはじーっと眺めて、興味津々なようだった。
「でもさ、屋上に飛んで来たら、降りるときに屋上側から鍵開けるんでしょ?そのまま開いた状態にしてたら立ち入ったこと先生とかにばれるよね」
「さあ。なんで開いてんだとは思われてるだろうけど、滅多に使わないからな。だから昨日アンタに見られたのは奇跡といってもいい」
「それって、私と奇跡的で運命的な出会いをしたってこと!」
「馬鹿か」
冗談めかして言ったことをバッサリと切り捨てられ、容赦ないなあなんて思いながら扉を開いた。
昨日よりも少し冷たい風が吹いている。
「……器用に鍵開けるんだな。俺も今度からそうしよ」
「誰にも教えないでよ?」
お互いにもう帰る準備を済ませてきていた。地面に荷物をどさっとおろして、とりあえずその横に座り込む。
さあどうやって話を切り出そうかと思っていると、一条くんがどこか言い出しにくそうに声を出した。
「あのさ、ああいうのやめろよな」
「?ああいうの?」
何のことかわからなくて首をかしげると、一条くんは頭をガリガリと掻いた。
「だから……、その、俺に手振ってきたり、とか」
「あ」
どうやら今日の休み時間のことを言っているらしい。
逃げられたから不発に終わったけれど、せっかくだから話しかけたかったのに。

