職員室に寄ったあと、私の足は久しぶりに屋上へと向かっていった。
もしかしたらもう行かないかもしれないとさえ思っていたのに、スカートのポケットの中には屋上のドアを開けるためのヘアピンが、ずっと入っていた。
そのことが、私の決意の弱さを物語っているように思えて情けなくなる。
「……あいてる?」
鍵穴にヘアピンを差し込むと、いつもと違う感覚がした。
不思議に思ってドアノブを回してみると、驚いたことに鍵が開いていた。
誰かが鍵をかけ忘れたのだろうか。
だとしたら、その人は何のために鍵を開けたのか。そんなことが出来るのは、ここの鍵を持ってる先生か、あとは……。
「……それはないか」
思い浮かんだ考えを振り払うように、頭をブンブンと振った。
久々に足を踏み入れた屋上には、誰もいなかった。
相変わらず通り抜ける風は気持ちがいいし、だんだん日が短くなってきたこともあって夕日が綺麗だった。
手すりに掴まって、オレンジ色の空を見つめる。
街中の車の音や、残ってる生徒の声が、どこか遠くから聞こえてくるようだ。
今、一人占めしてるこの景色を、卒業までにあと何回見られるだろうか。
どうせなら思いっきりこの空を堪能してやろうと思って、地面に寝転んで上を向いてみる。
この瞬間が、たまらなく好きだ。
世の中のすべてから解放されたような気分になるから。
1人でここにいることに、違和感を覚えた。
一条くんと知り合ってからは、いつも2人でここに来てたから。
最後にここに1人で来たのは、一条くんと知り合った日のことだ。
今みたいに寝そべっていたら、急に一条くんが現れたんだっけ。
ひとつずつ思い出していると、突然目の前に足が現れた。
そうそう、ちょうどこんな風に———。
「え?」

