「真子ちゃんさ、頑張ってよ」
「え、頑張るって?」
何のことかわからなくて聞き返すと、早川くんは「これだもんなぁ」と苦笑いをした。
「一条はああいう奴だから。何考えてるか僕にもわからないし、本心を誰かに言うこともないのかもね。だから真子ちゃんが頑張らないと、たぶん時間かかっちゃうよ?」
「え、だから何を頑張るの?」
「えー、それを僕に言わせる気?酷いなあ」
ちょっと拗ねたような顔をした早川くんは、なんだか楽しそうに見えた。
本当はきっと、一条くんのこと心配してたんじゃないのかなって、こっそり思った。
なんだかすごく、一条くんに会いたくなった。
せめて、久しぶりに屋上に行ってみようか。
「じゃあ僕は帰るよ。真子ちゃんは?」
「手伝ってくれてありがとう。私は、これを職員室に持っていかないと」
机の上のプリントの束を指差す。
そうだったね、と微笑んだ早川くんが、教卓から飛び降りる。
そして教室から出て行く間際に、顔だけ振り返ってこう言った。
「これからも、たまには一緒にお昼食べようね」
「……うん!是非!」
「いい返事。じゃあ、また」
早川くんの足音がだんだん遠ざかっていく。
ありがとう、早川くん。
今日を境に、私達の関係はまた少し変わった。
私も、一歩踏み出さないといけない。
逃げてばかりじゃダメだ。

