こんな私が、恋したみたいです。

私と離れたりっくんは、ベンチをまたいで私に向き合う。




「ねぇ、俺と付き合ってくれる?」




花火でたまに見えるりっくんの顔は、やっぱり赤らんでいた。





それでも、優しく、ニコニコしていた。





うん、って頷かなきゃ。





バクバクと音を立てる心臓に手を当てて、深呼吸。





「うわぁぁあ!?」





「え?」





りっくんを見て、頷こうとした瞬間、りっくんが大声をあげる。




あんなに緊張したのに、こうとなればりっくんを見るのは一瞬で。




仰向けにベンチに倒れていた。





その、目の前には、





知らない女の子。





「ねえ、どういうつもり?」





知らない声。





「あ…、久しぶり」





りっくんの、小さな声。






「煩い!どういうつもりかって聞いてんの!」





その子はヒステリックに怒り始める。





「え、ねぇ、やめてよ。何怒ってんの?」






というか、あなた、誰?



りっくんを鋭い目で見るその子の腕を掴んだ。




「チッ。死ね!」




一瞬でそれは振り下ろされて、あまりの勢いに足元がふらつく。





「…うわっ」





りっくんが、女の子が、いきなり遠くなって行く。





あぁ、多分私転げ落ちるんだ。坂、急だったっけ?





「りっちゃん!!!!!」





名前を呼ぶ声が聞こえて、でも私は目を固く瞑った。




「…あれ、」





全身に温かみを感じて、大好きな匂いがやってきて。





私は目を開ける。





「よかったー、おい!お前なんてことしてくれてんだよ!」




私の背中を抱きとめてくれたりっくんは、お腹の前で腕をギュッと結んだ。





「そっちが悪いんじゃん!」




「しらねぇよ。お前が勝手に騒いでるだけだろ」






「はぁ?流すよ?いいの?約束破ったんだよ?」





「いいよ。流せるもんなら流せよ。どんなことになっても、次は俺りっちゃんのそばは離れないから」





私にはわからない話を淡々と進めていて、りっくんはそれとなく私を背中に隠す。





「…しーらない」




そう言って、その子は私の横を通って、私を思いっきり睨みつけて、帰ってしまった。