「次、外すまでね」




そう言って、私の背中に回っている腕が私を支え直す。





「せーのっ」




いきなりかけられた声に、怒られたくなくて、とっさに唇を噛むのをやめた。



「いい子じゃーん」




ぐしゃぐしゃと、ちょっと乱暴に頭を撫でられる。





「ふへへっ」




嬉しくて、思わず笑ってしまう。




「やっと笑ったぁ!!!」




いきなり大声を出されて、勢いよく抱きしめられて、びっくりした。





「な、なに?」






顔が完全に橋森くんに埋まって少し息苦しい。




「俺、りっちゃんの笑った顔が1番好き」




ぎゅぅっと、きつくきつく抱きしめられる。




好きなんて、軽々しく言うもんじゃないよ。





私がこんなにドキドキしてるの、知らないくせに。




でも、苦しくてもとっても居心地が良かった。




だから、その胸の中にもう少しだけ収まっていたかった。




「ね、ねぇ」




私の後頭部をずっと撫でてくれる橋森くんに声をかけるけど、ワイシャツのせいで曇ってしまった。





「ん?」




「…前髪、」





ままに引っ張られて痛かったところ。




「前髪?」




反動で、少しだけ腕が緩まる。




「撫でて、ほしい…」





恥ずかしくて尻すぼみしてしまったけど、伝わったかな?




「前髪…?ここら辺?」





橋森くんの手が触れるたびに胸が高鳴る。




それ以上に、嬉しくて、仕方がない。




「合ってる」




平静を保とうとしたけど、涙で声が震えてしまった。