こんな私が、恋したみたいです。

手が離れていくのが、惜しい。




「どうしたの?」



そんなことを考えていたら、橋森くんの手を握っていたようだ。





恥ずかしさで消えそうになりながらも、言い訳を探す。





「お散歩、無理…?」




「そんなふらふらじゃ無理だよ」




きっぱりと、でもケラケラと言われた。





「そっか…」




残念かも、と思いながら、手を離す。




「行きたい?」




「無理なんでしょ」





分かりきっていること、聞かないでよ。




「おんぶしてよっか?」




「…え?」




少しだけ見えた兆しに、思わず顔を上げた。




「行こ。俺、りっちゃんと外行きたい」





私に背中を向けた橋森くんは、まるで自分のわがままを聞いてくれでも言うかのように言う。




私のせいじゃ、ないみたいに。





「じゃあ…」




恐る恐る、橋森くんの首に手を回した。




「じゃ、しゅっぱーつ」




すんなりと私を持ち上げて、遠足みたいにそう言って、足で病室のドアを開けた。




「嬉しいからってはしゃぐなよ?」





なんて、冗談まで言われてしまう。




「足、ジタバタするかも」





それに付き合って、2人で笑う。




久しぶりに出た外は、夜なのにまだジメジメとしていた。