こんな私が、恋したみたいです。

「あっ、」




転ぶかもしれない。いや、絶対に転ぶ。




床はゆっくりと近づいているのに、一向に体が動かない。




手が出せない。





このままじゃ、顔から突っ込むかもしれない。




それは痛い。嫌だなぁ。




せめてもの抵抗で、目をぎゅっと瞑った。







「…っぶねー」





覚悟していたつもりの痛みは一向にやってこなくて、代わりに橋森くんの声が聞こえた。




恐る恐る、その目を開けてみる。




「大丈夫?ふらってしちゃった?」





そこには、ニコニコした橋森くんが、すごく近くにいた。





「…だい、じょーぶ」




橋森くんの膝の上に仰向けになっているらしい私は、その状態に耐えられなくて起き上がろうとする。





「あっ…と、」



支えにしていた腕がガクッと震えて、また、その膝に倒れ込んでしまった。




「じっとしててね」




私の行動に一切笑わずに、そう言って、体勢をかえる。




「せーのっ」




「わぁっ」




いきなり体が浮かんで、反射的に橋森くんの首に手を回した。




おそらくお姫様抱っこになっているだろう。




恥ずかしいけど、もう少しだけこのままがいい。




なんて、そんなことは言えなくて、橋森くんはベッドの上に私を下ろした。