こんな私が、恋したみたいです。

だけど、橋森くんがいるのにそれはもったいないと思って、手を止める。




「ねぇ」




私ね、1ヶ月、こことトイレの往復しかしていないの。




「うん?」




「散歩、行きたい」



外の匂いを嗅ぎに行きたい。




「あー、いいけど、大丈夫か聞いてくるね」




思ったより心配性なのか、私は全然平気なのに、川田さんに聞きに行ってしまった。




どうかなどうかなって、久しぶりにわくわくする。







「オッケーだって!」




指で丸を作ってすぐに戻って来た。




「ほんと!?」




嬉しい。





「うん、行こっか」




携帯と財布を持った橋森くんは、ニコッと笑う。




ただそこらへんを歩くだけなのに、嬉しくて嬉しくて、勢いよくベッドから立ち上がる。




サンダルに足を通して、一歩、橋森くんの方に踏み出そうとした。






「……っ、」




ちゃんと、立てたはずなのに。







足に力が入らなかった。