「なんの話ししてたんでしたっけ?」



カクンと首を傾けて、俺を見る。



「ラーメン楽しかったって話」



「あ!そーだ!!記憶障害激しめ」



自分を嘲笑して笑ったけど、すぐに話し始めた。



「そのあと確か、どっかで勉強したんです!数学教えてあげた気がする!」




うん、正解。その通りだよ。



「それでー、なんだっけ?」



俺が電話かかってきて、居なくなったんだよ。




なんて、言えるはずもない。




「聞いてるだけで、すげえ楽しそう」




「でしょ!!もう一回行きたいなー、ラーメン」




遠くを見つめて、楽しい思い出に浸って笑っている。



「俺でよければ行く?ラーメン」




「え!本当ですか?」



「うん。…あ、おんなじところとは限らないけどね」




怪しまれないようにフォローを入れる。




「行きたい!」



「行こう。元気になったら」




引っ越す前の、最後の思い出かな。




「絶対ですよ!忘れないでくださいね!」



「こっちのセリフだよ」



そう言うと、確かに私のが危ないや、と、悲しそうに言った。