こんな私が、恋したみたいです。

りっちゃんを素知らぬふりをして、部活を終えた。




大した距離じゃないのに、走って体育館に向かう。



「おー、きたきた」



もっちは部活が早く終わるから、家にものを取りに帰ると言っていた。




何を持ってきたのかと思えば、ヘアアイロン。



「俺、こんなの使ったことないけど」



「はい黙ってここ立って。急ぐよ」



パチパチと、ヘアアイロンの音を立てながら鏡の前を指差す。



言われた通りにそこに立った。




「お前、頭臭い」



「え!酷くね!?」




「部活ガチ勢あるある」



なんやかんや言いながら、真面目な顔して髪を整えてくれた。





「あとこれ」



荷物をカバンにしまいながら俺に、充電ケーブルを渡してくる。




「りっちゃんに会えないなら、必要品は俺が貸すから」



ちょっと顔が赤くて、そっぽ向いている。




「もっち大好き!!」




「臭いから離れて」



「ありがとー!!」



充電ケーブルを丁寧にカバンにしまう。



「じゃ、行こうか」




「そうだな!」



2人で校門の前まで行って、俺はチャリ置き場に行こうとした。



「りっくん、これ、姉貴の車」





「え?」



「俺の努力、チャリで台無しになるよ?」




そんなところまで、考えてくれたのか。




「さっすが!!モテる男は違うね!!」



ここまで考えてくれるなんて、本当にいいやつだと思う。




「ほらそこのチビ。早く乗りな」



もっちのお姉さんにまでチビ呼ばわりされたけど、まぁ、そこは黙っておく。



「急ぎで!」



「タクシーかよ」




へへへって笑って、車を飛ばしてくれた。