こんな私が、恋したみたいです。

そのまま、面白いぐらいに固まる。



「お前、ふざけてんの?」




ようやく俺に顔を向けたと思ったら、ひどく不機嫌な顔だった。



「大真面目」




「え、りっくんのことも?」



「うん。たぶん、もっちのこともね」



誰にも言うなよ、と付け加える。



「は?何で!?」


俺の肩を掴んで、揺さぶる。



だから、その手を剥がして、携帯に目を向ける。




『倒れた時に頭打ったんだと』
『知らない人からいきなりりっちゃんなんて馴れ馴れしくされたらビビるだろ?』




だから、嫌だけど、神多って呼ぶことにした。




「まじかよ…」




項垂れていたもっちは、しばらくして文字を打ち始めた。



『そんで?幸い覚えてないからって何もなかったことにして仲良くするの?』



キッと、許されないぐらいに睨まれる。




『いや、今日謝るつもり。だけど、何があったのかは言わない』




せっかく、忘れられたんだから。



『思い出させる方が、酷だと思わない?』



りっちゃんは、何も知らないで、楽しいことだけ思い出して笑っていればいい。




「そー、だな」



言葉にして、もっちは携帯をしまった。