こんな私が、恋したみたいです。

病室を出てドアが閉まる。




「律ね、倒れた時に頭を強く打ったらしくて」





「…はい」





「記憶が、断片的になくなっているのよね」





俺まで、頭を強く打ったようだ。




「ほんと…、ですか?」





「えぇ。学校のことは一切覚えてないわ。」




嫌な、思い出、ってことか。




俺のこと、そんなに嫌いになってしまっていたのだろうか。




記憶から消し去って、何事もなかったかのように過ごしたいくらいに。




「律があなたを忘れているってことは、昨日まであなたは律のストレスになっていたわけでしょう?」




鋭い目が、俺を削る。




そうだ、その通りだ。りっちゃんを追い詰めたのは、他でもなく、俺だ。




「だから、あなたはもう、ここには来ないでちょうだい」




さっきりっちゃんに見せていたような優しい顔はなかった。




「それは…いや、です」




俯向くことしか出来ない自分が、とことん情けない。




「嫌?何を言ってるの?私の娘をこんなんにまで追い詰めて、それでもまだやりたりないの?うちの娘が、何をしたっていうの?」





マシンガンのような攻撃に、狼狽えてしまう。




「わかり、ました」




結局、俺は弱い。





渕月さんの時だって、折れたのは俺だ。




「もう、律に嫌な思いをさせないで」





「…はい」




「じゃあ、学校に戻りなさい。サボってきているんでしょう?」