「…え?」



わけがわからない。意味が、わからない。



「だーかーら、こう」



ぎゅっと、握る手に一層力を込めたりっくん。



「…なんで」



ドキドキする。もうこれ以上、近づかないでほしい。



「ん?」



これ以上、しゃべんないでほしい。



「…なんでもない」


近くにりっくんがいるって感じるたびに、どうしようもなく、胸が高鳴るから。







「でも、りっくん」



それでも話しかけるんだから、私ってつくづくバカ。



「ん?」



電車が来ますって、掲示板が言っている。



「うちの最寄りまで来たら、家帰るのめっちゃ遅いじゃん」



疲れてるでしょう?レストランで寝ちゃうぐらい。



なら、早く帰って、休みなよ。



「それはいーの!変なおっさんいるかも知れないし」



出たそれ、って心の中で笑いながら、



「大丈夫だよ。無視しとけば」



「うるさいなぁ」



ケタケタ笑ったりっくん。電車がホームにやって来た。



「いーんだよ……」



「え?」



聞こえなかった。だから、聞き返した。



「なんでもー?」



そういって、手を繋いだまま、電車に乗り込む。