「なつこ、ここを出よう」
「え?」
私はあの女の刺さるような視線を感じながら、旬に連れられて店を出た。
結局、あの女からは何も聞き出せなかった。分かったのは、あの女が旬に本気だとういうことだけだった。
「なつこ。ここにはもう来るなよ」
「うん」
もう行く必要もない。あの人とは冷静に話せそうにない。
だから、最終的にやっぱり旬に聞くしかない。
「あの女の人誰?」
私は旬と並んで歩いた。
隣を見れば旬がいることに、少し違和感があった。それだけ私達は離れていた。
「あの子は俺のホストのお客さん。最初は失恋を癒す目的でホストに来たんだけど、俺のことが気に入って、キャバクラまでしてお金を貯めて、俺のとこに通うようになったんだ。俺達はホストとお客さんって割りきった関係にあったんだけど、お店で俺となつこがキスしたのを見てから、だんだん俺に多くを求めるようになった」
