すると、斉藤はるかの手が黙ってりんごにのびた。そして少ないりんごを次々と口にした。
「美味しい」
斉藤はるかは病人のくせにとてもご機嫌な表情で、私を真っ直ぐに見つめてそう言うので、不覚にも・・・・少し、可愛いと思ってしまった。いつもこいつの無愛想な表情に慣れてるから、尚更だ。
私はただりんごの皮を剥いただけなんだから、美味しいりんごを買ってきた上田くんにお礼を言えばいいのに・・・・
「駄目だ、見てるこっちが恥ずかしい」
「俺もだよ。俺たちもう帰ろ~」
「あー、うざっ。じゃあ、瀬戸先生後はよろしくお願いします☆」
急に、お見舞いに来た3人は私に押し付けてきた。
紀村くんなんて今さっき来たばっかのくせに、もう帰るの?
