そして、デザートと食後のコーヒーが運ばれてきたとき、旬が怖い顔をして口を開いた。
ーーーー嫌な予感しか、しなかった。
「俺たち、距離を置こう」
理由を聞いても、答えてもらえそうな雰囲気ではなかった。私は涙が溢れてしまう前に、レストランから慌てて出た。涙を流して、旬にすがる惨めな姿を人前でさらしたくなかった。
このホテルにはタクシーで来た。
でも、今は誰とも口を聞きたくなかったので、私は歩いて帰ることにした。一人で歩いて考える時間が欲しかった。
すると、雨が突然降り始めた。傘は持ってきていないが、ずぶ濡れになることも、もはやどうでもよかった。
