ーーービシッ。「いった!」
俺はその女の額に容赦なくデコぴんをした。
すると、その女は先程の情けない表情とは一転して、額を押さえて俺を睨み付けた。
「手、どこで洗った?」
「は?」
「軍手してても洗うだろ。洗ってねーの?汚っ」
「失礼ね!!いつもより、念入りに時間かけて洗ったわよ!!」
「石鹸で?」
「そうよ!泡をもこもこにして!!ーーーーーあっ!!!」
その女は何かに気がついたように、近くの水道に走った。
指輪は石鹸をつけると、抜けやすい。もしかしたら、草抜きをした後、念入りに手を洗った時に指輪を無くしたと俺は考えた。
「斉藤はるか!!」
目をキラキラとして、俺のもとへ駆け寄ってくる女教師。
「あった!!水道のとこに落ちてた!!」
「・・・っ」
よほど嬉しかったのか俺に抱きついてきた。幼い表情で、ぴょんぴょんと跳ねながら体を押し付けてくる。
俺は、思わずその女の背中に手を回そうとしたが、勢いよくそいつをべりっとはがした。
俺の気持ちが教師であるこいつにばれたら、距離をこれ以上置かれてしまうことは分かってる。
「暑苦しい。泥臭い」
「もうなんなの?可愛くないやつね」
チラリと目にはいった、元の場所にはめられた指輪はその女の目と同じで、とてもキラキラと輝いていた。
