俺はそれを払いのけた。その衝撃でその女は転んで、大粒の涙をこぼしながら俺を見上げた。
「俺もどんな手を使ってでもあんたと婚約破棄する。だから、あんたを責めないし好きにしたらいい」
俺はそれだけ言って、脱いだ服を着て、さっさとホテルを出てタクシーに乗り込んだ。
早く家に着けと気持ちが焦る。大事な人を失ってしまいそうで怖かった。
“ガキのあんたに私は守れない。私に2度と近づかないで”
また、あの言葉が聞こえる。
マンションに着くと、俺は走って、女教師の家のピンポンを鳴らして、扉をドンドンと叩いた。
きっと、不機嫌で迷惑そうな顔で出てくるに違いない。今はそんな顔でもいいから早く見たい。
扉を叩く手が痛いだなんて感覚はない。「出ろよっ!」と怒鳴る俺は、もう気づいていた。それでも気がつかないふりして、扉を叩いたり、チャイムを鳴らしたりを繰り返す。

