そう頭の中で考えるのだけど、一歩が出ない。

なにかその一歩になる、きっかけが欲しい。

 

  







「ため息なんかついちゃって、どーしたんですか?瀬戸先生。僕、相談に乗りますよ!」


「鈴木先生。私はいたって普通ですので」




職員室で体育教師の鈴木先生が明るく大きな声で話しかけてきた。私は鈴木先生の熱苦しさに苦笑いで返した。

すると、今までゆっくりと話したことのない色っぽく、綺麗な『白衣の女王様』こと、化学の北川先生が突然話しかけてきた。









「えー瀬戸先生ったら、失恋したんでしょー?」


「も、も、もしや!!この間のキャバクラ事件が関係してますか?」


「なにその話!?後で聞きたいわ。私、人の恋愛に口出すのが好きなのよ」


「北川先生こそ、最近どーなんですか?IT会社の社長とは破局した噂が流れてますけど」






私は自分のことを根掘り葉掘り聞かれる前に、そっと職員室を出ようとした。しかし、北川先生が逃げようとする私に再び声をかけた。









「瀬戸先生。私も別れたんですよ。でも、まぁ私から振ったのだから失恋した先生とは違いますけど」


「・・・・結局、何が言いたいんですか?」



「そんな怖い顔をしないでよ」







北川先生はクスクスと笑って、私の耳元で次のように言った。ーーー『強制参加の合コンのお誘いです』