【短】矢田くんはヒーロー。



「今さっきした俺の話、聞いてた?」


北野くんが真面目な顔つきで私に迫る。


「……ごめんなさい」



…完っ全に聞いてなかった。


北野くんが、はあ、と少しため息を漏らした。



「今日この後予定ない?」


北野くんの真剣な顔に思わず固まる。


「予定…ないよ」


「ちょっと今から付き合ってほしいところがある」


そう言った北野くんは私の手を掴んで歩き出した。


予想外のことで、心臓がドキッと跳ねる。