「椿・・・」

どうしようもなく椿に会いたくなる気持ちを
全て研究にぶつけているうちに
気がつけば12年の時が過ぎていた。
椿に会いたい。
椿がいないと張り合いがない。
もう一度だけ、もう一度だけでも会えたら
僕は君を離したりしない。
こんなに辛いならこんなに苦しいなら
愛さなければよかった。
知らなければよかった。
愛おしいなんて感情は疲れる。
愛なんていらない。
椿がいないなら何もいらない。
そもそも陸斗君・・・君さえいなければ
君さえいなければ椿は

ふと窓ガラスに映る自分が目に入る。
伸びっぱなしの汚い髭と髪の毛で
すっかりおっさんになっていた。

あぁこれじゃぁ椿に怒られてしまうね。
ふらつきながら洗面所へ向かった。

ピーンポーン

誰だ・・・。

ドンドンドンドン

うるさいな
母さんいないのか

ピーンポーンピンポピンポピンピンポーン

誰だよ

しぶしぶドアを開けた。

ガチャ