「わりぃ!俺今日よるところあるから先行くわ!」

雅哉にそう告げた陸斗は、秋人の家へと向かった。

ピンポーン
ガチャ

「はい。」

「弁当・・・あんたが作ってんだろ?」

「陸斗くん。」

「ちっちゃい時の記憶しかねぇけど
今日入ってた芋もち、チーズ入ってなかったから。」

「こりゃ参ったな。もう中学生だしね、話す時がきましたね。」

秋人は全てを話した。
椿が心から陸斗を愛していたこと。
椿が適合者で、自分の意思で陸斗のドナーになった事。
そして秋人が椿を愛していた事。
それなのに守れなかった事。
そして毎日陸斗に弁当を作る事、椿が楽しみにしていて、
君が20歳になるまでのメッセージカードを預かっている事。
君が20歳になるまで、話さないと約束をした事。
全てを話して秋人は、陸斗に頭をさげた。

「俺、なんも知らなかった。
なんも知らずに能天気に走り回ってた。
自分の命に代えてまで、俺を助けてくれたなんて・・・知らなかった。」

秋人はひたすら頭をさげていた。

「やめてください。
今日はもう、帰ります。」

陸斗が帰っても秋人は動かなかった。
動けなかった。
そして家路についた陸斗は幼かった時のように泣いた。
声が枯れるまで泣いた。