目を開けた。
白い天井に、蛍光灯。
視界の端には白いカーテンと…黒い綺麗な髪。

「おはよう」

透き通るような優しい声。
聞き覚えのある声。
まだ視界がぼやけてよく見えない。

「夢見た?」

答えたいのに声がでない。
喉がカラカラでへばりつくようで

「どうせエッチな夢でもみてたんでしょ?」

違っ…違う。視界がはっきりしてきた。
彼女は…そうだ。
俺の片思い中の佐倉 柚姫 (さくら ゆずき)だ。
でもなんで柚姫がここに。
って、その前にここはどこだ?
懐かしい匂いがする。古臭い木の匂いに、シューズの音…たくさんの足音。

「…学校」

あ、声がでた。
そもそもなんで学校?

「そうだよ?何、寝ぼけてんの?」

なんだよその悪戯な笑顔は
くそ、可愛い。

でも…なんか違う。
俺の知ってる柚姫より、ちょっと目が腫れぼ…泣いたのか?

「保健室。覚えてないの?急に走り出すから追いかけたら窓から飛び降りるんだもん。」

俺が?飛び降りた?
なんでだ。
そもそもなんで学校なんかに…まさか

「タイムスリップ」

「何言ってんの?頭強く打ちすぎた?なわけないでしょ。
今日は2117年5月2日です。陸斗が28歳の誕生日でしょ。」