もう逃げ道がない。
「どうなんですか?ヒナ先輩」
それでも佐野くんは、怖い顔をして私に詰め寄った。
「さ、佐野くん…落ち着いて?ね?」
近付いてくる佐野くんの胸を押して、なんとか落ち着いてもらおうと制する。
が。
ーーーーーーパシッ
「…っ!?」
その手もまんまと佐野くんに捕まれ、完全に身動きが取れなくなってしまった。
「落ち着いて?そんなの無理に決まってるじゃないですか」
「ちょ、佐野くんってば…っ」
年下とはいえ、どんなに頑張っても振り払えない男の人の力。
「好きな女取られそうになって、焦らない男なんていませんよ」
続けて、佐野くんはそんなセリフを言ってのけた。



