「代永!」

背後から俺を呼んだのは浅田だった。

「やっぱり俺、お前がひとりぼっちになるのは違うと思うんだ!お前は悪くないんだから!」

「浅田…。」

浅田は優しい。

「あのー、代永先輩ですか?」

「え、」

気付けば目の前にボサボサ頭の後輩がいた。

「ばか樋口!すいません先輩!」

「あ…うん、代永だよ。」

「あの噂、本当なんですか?」

淡々とそう聞いてくるボサボサ頭の前に、浅田が立ちはだかった。

「あんなの全部デマだよ。」

すると、ボサボサ頭は納得したように笑った。

「ですよね。ヤクザの女に手出してたら、今頃埋められるか沈められるかしてますもんね。…だって、荒川。噂は所詮噂だよ。こんなの信じるから、君は成績悪いんだよ。」

「うるっさい。…すいませんでした。」

彼らは教室に向かって歩いていく。