「…優人と同じ大学に行きたい。県外の大学なんだ。」

「優人くんって、あの優人くん?彼の志望校に匠の学びたい学問があるのか?」

「…それは…」

口ごもる匠にお父さんの表情が曇る。

「匠、友達と同じ大学に行きたいっていう気持ちは分かるよ。仲良しの友達と離れたくないもんな。でもな、それだけの理由じゃ、大学での勉強は匠のためにならないよ。匠と同じ理由で大学を選んだ生徒を何人か見てきたが、好きなことを学べない時間っていうのは、ただただ苦痛でしかない。もちろん、ちゃんと学んで身につけた者もゼロではないと思うが、せっかくの若い4年間、無駄にはしてほしくないんだ。」

お父さんの言うことはもっともだ。これは私も何も言い返すことができない。ごめん匠。すると匠は顔を上げて、声を震わせながら言った。

「…離れたくないんだ、優人と。4年の間に優人の心が離れていくと思うと怖くて。」

「え?4年くらいで優人くん匠のこと忘れないよ。ずっと友達だったじゃん。」

匠の言葉に違和感を感じて、思わず口を挟んでしまった。

「違う…優人は友達じゃない…好きなんだ、優人のこと。自覚したのは中学の時だったけど、小さいときからたぶんずっと好きだった。」

「…好きっていうのは恋愛感情か?」

「そう。優人に思いを伝えたら、優人も答えてくれて、今付き合ってる。4年は長い…離れたくない…」

衝撃の事実だった。優人くんと仲がいいのは知っていたが、まさかそんな関係だったなんて。