日曜日。

今日、匠がお父さんに志望校のことを話すと言っていた。お父さんは大学教授だ。普段は穏やかで優しいが、筋の通ってないことは嫌いで怒ると怖い。私は匠を助けられる武器は何もないけど、少しでも匠に助け舟を出せるよう、同席した。

リビングのソファに座る父と弟。そして台所で用事をしている母。私は食事用のテーブルに座って仕事をしている…フリをした。

「お父さん、話したいことがあるんだけど。」

匠が切り出した。

「なんだ改まって。」

「あのさ、俺、志望大学変えたいんだ。」

「それはまたどうして。もっと上の大学目指したいのか?それとも、成績が悪くて志望校目指せなくなったのか?」

優しく聞く父さん。匠は拳を強く握ったまま、下を向いている。本当のこと言ったら反対される。教員の私が言うのもなんだが、それだったらテキトーに嘘をつけばいいのに。目指したい進路が変わったとか、将来の夢が明白になって学びたいものが変わったとか。

でもそんなテキトーなことを言えない性格なんだ匠は。