「おにーちゃーん。」 悠里ちゃんだ。私は荷物の物陰に隠れる。 お兄さんは悠里ちゃんの前に出ていって教科書を渡した。 「はい馬鹿。」 「馬鹿ってひどくね?ありがとう。」 悠里ちゃんは教科書を受け取って教室から出ていった。 「いいの?」 「…。」 「もう一度大切なことを言う。うちの妹は馬鹿だ。」 「は?」 「いけ。」 「え!?」 お兄さんに文字通り背中を押されて私は教室を飛び出してしまった。 「あれ?彩乃っち?」 「悠里ちゃん…」