人の気持ちなんて金で動かせる。権力が働けば尚更だ。
ボサボサ頭…樋口幹生の父親が働いている会社は、うちの会社と取引している。なら話は早い。
手始めに、まずこいつから行こう。
翌日の放課後。佐藤に頼み、習い事の時間を遅らせてもらった。
そして樋口幹生の家の近所で待ち伏せする。彼がひとりで来るのを見計らって。
…来た。
だるそうにこちらに向かって歩いてくる彼の前に俺は立った。
「樋口幹生。」
「は?誰?」
まあ普通の反応。
「俺は、藤原グループの次期社長、藤原悠悟だ。」
「はあ。」
「うちの会社と、君のお父さんが働いてる会社は取引関係にある。」
「そりゃどうも。」
「ところで、君は立花総悟の友達だろう。」
「は?」
「とぼけなくていい。調べはついてる。」
「いやいや、意味わかんない。話の流れがわかんない。」
「立花総悟と、友達をやめろ。」
「は?」
「立花総悟から離れたら、君のお父さんが出世できるように手助けしよう。でももし、このまま友達を続けるなら、君のお父さんの会社はどうなるかわからないよ。」
兄貴が捨てた権力で、兄貴から友達を奪ってやる。

