「いいか。反省文書かないと、今日の授業は欠席扱いにするからな!」
「ひどー。職権乱用ー。パワハラー。」
「なんとでも言え。」
相変わらず樋口はちんたら走っている。
「樋口だっせー。」
「うるっさ。」
樋口にはちゃんと友達がいる。それはとてもいいことだ。しかし彼は、放っておいたらいつでもひとりぼっちになりそうな性格をしている。
きっと彼は挫折を知らない。だからこそ我が道を突き進むことが出来るのだろう。挫折を知らないまま大きくなったら、転んだとき起き上がり方を知らない人間になってしまう。
仮にひとりで起き上がれないとしても、手伝ってくれる仲間がいればいい。
しかし仲間は思いやりをもってこそ出来るのであって、彼にそんな思いやりがあるとは思えない。今いる仲間が離れていったら、彼は本当に孤独になってしまうのではないか。
起き上がることのできない大人になってしまうのではないだろうか。

