でも怖かった。森田先輩という強い勢力を敵に回すことが。 俺だけでなくみんな空気を読んだ。自分がターゲットにされないように。ひとりにならないように。 「小林、君の靴、ゴミ箱にあったんだけど、これ捨てたの?」 ひとりだけ例外がいた。同じクラスの樋口幹生だ。 彼は自由気ままだった。自分のしたいように、思うがままに行動する、空気の読めないやつだった。 そして彼は、小林に話しかける。 「あ…いや…ありがとう。」 「小林、君いじめられてるんだろ。」 ストレートな発言に教室が凍りついた。