そう思っていた私に、神様は高い壁を設けてきた。


それは、カウント4-6のとき……


センターに上がってきた中ロブを取ろうとして足がもつれ、倒れてしまった。



「痛っ!」



くそ痛い……


かなり足をひねってしまったようだ。


しかしボールはなんとか返す。


よし、前衛にはかからない。


でも後衛は……実羽ちゃんのお姉ちゃん……



くそっ……ダメだ!

身体が動かない。



パコーン!


ボールを打った音が聞こえる。


しかも、そのボールは実羽ちゃんからは一番遠いところに着地した……


私の足が動いたら、確実に私が取るところ。


ごめんね実羽ちゃん……


せっかくの姉妹対決だったのに……


ようやくプレーが軌道に乗ったのに……


ここに勝てば全国に行けるのに……


みぅちゃん、あなたがいじめられてた事、私は知っていた。

それを私に気づかれまいといつも笑顔で振舞ってくれた…

だから私も何も言ってあげれなかった。

この日のために……全国に行って活躍するための切符を手に入れるために、みぅちゃんは何度泣いたんだろう……

ずっと走らされていた時も、夜遅くまでバカみたいに走ってたよね……

私も行こうとしてたけど、先輩から止められちゃった。

そこで素直に聞いて行かなかった私はどうせ臆病者だよ……

みぅちゃんが真っ暗なコートの中で独りでサービス練習してたのも知っている…

私だったら絶対にできないよそんなこと……

みぅちゃんはこんなに本気だったのに、私がこんなんだから…

あんな大口叩いて無理言ってみぅちゃんと組んでもらって……

みぅちゃんと組んでるのが私なんかじゃなかったら……

もしみぅちゃんと先輩が組んでたら……

この試合、負けるはずがないよね……


なんて謝ろう。


いや、許してくれるのか……?


今度一緒に美味しいもの食べに行こう!


そんなので許してくれるはずがない…


みぅちゃんにとってテニスは家族よりも大切なもの……


家族を捨ててまで羽黒に来たみぅちゃんに、勝利以外はいらないよね……


そんな事を考えている私の目には、ツーバウンドしようとしているボールだけが映っていた。