まずは、キャプテンさんに挨拶だ。
えーと…………あ、いた!
「工藤先輩!」
私は、バスケ部キャプテン、工藤響平(くどう きょうへい)先輩に声を掛けた。
「あ、君が新聞部の子か。
取材、よろしく頼む。」
「紺野麻陽です!
こちらこそよろしくお願いします」
ぺこっとお辞儀をすると、工藤先輩は優しく笑ってくれた。
体ががっしりしていて、
背も高かったから少し怖かったけど、優しそうな人でよかった…………!
「悪いな、紺野。
部員の皆にはまだ取材のこと伝えられていないんだ。」
「いえ、全然大丈夫です!
こちらこそ急に頼んですいませんでした。」
そんな会話をしていると、
「知らない子はっけーーん!」
と、後ろから声が聞こえた。
振り返るとそこにいたのは、女子の先輩。
綺麗に整った可愛らしい顔に、1つに束ねられたサラサラの髪。
手足も長く、まるでモデルみたいだ。
「取材で来ました!新聞部の紺野麻陽です」
「取材かぁー!
私はマネージャーの大塚沙織(おおつか さおり)!
麻陽ちゃん、よろしくね!」
そう言ってにこっと笑った大塚先輩の笑顔は、
女の私でもキュンとくるほどの可愛さだった。
「あれ?可愛い子がいるー」
そう言って次にやってきたのは、
背の高い男子の先輩。
茶髪でちょっとチャラそうだけど、
少しタレた目は人懐っこそうな印象を受ける。
「新聞部の紺野麻陽です
よろしくお願いします!」
「取材か!
俺は副キャプテンの森下瞬(もりした しゅん)。
俺を撮るときは、カッコよくしてね?」
副キャプテンさんだったのか………!
そう思ったのもつかの間、
「麻陽ちゃん、カワイイね?
今度俺とデートしよっか」
森下先輩はそう言って私の肩に手を回してきた。
「でっ、デート………!?」
い、いきなりなんだ、この人!
断ることもできず、1人慌てていた、そとき。
________パシッ
肩にかけられた手を振り払う音とともに聞こえたのは、
「瞬、離せ。困ってんだろ。」
私の、憧れの人の声。
「し、篠崎先輩………!」
「ん?誰だお前。」
「密着取材できました!
新聞部の紺野麻陽です」
「………取材?初耳なんだけど。」
「はい、初めて言いました!」
真面目に返したつもりだけど、篠崎先輩の顔はさらに厳しくなった。
大塚先輩と森下先輩は、そばでくすくす笑っている。
「………………それって、俺もなの?」
顔を歪ませたまま、篠崎先輩は言った。
「もちろんです!
絶好調の先輩の姿、しっかりとカメラに収めます!」
意気込んで私が言うと、篠崎先輩は
「絶好調、か………………」
と、複雑そうな顔をした。
あれ、私なんか変なこと言ったかな。
「よし、バスケ部集合!」
一瞬そう思ったけれど、集合を呼びかけた工藤先輩の声で、バスケ部の練習は始まってしまった。

