あ…………
私、篠崎先輩のちゃんとした笑顔見たの、初めてかも。
薄暗くてもわかるその表情に、胸がときめいた。
「せっ、せんぱい!私の家、ここです!」
赤くなった顔をごまかすように、
ちょうど見つかった私の家を指差した。
「ん、ここか。」
さっきの笑顔、かっこよかったなぁ。
まだまだ収まりそうもなかった胸の鼓動のせいで、
すっと伸びた手に、反応することはできなかった。
ぽんっと、頭に置かれた大きな手。
「ありがとな、励ましてくれて。」
篠崎先輩は優しい声と顔で、そう言って、
私の頭をなでた。
「こっ、ここちらこそ、
送ってくれて、ありがとうございます!」
「ん、じゃあな」
篠崎先輩は、くるりと向きを変えて、歩いて行った。
方向、逆なんじゃん………
私のために、わざわざ?
ぼうっと先輩の背中を眺める。
心臓は、まだうるさいまま。
自分の頭に、そっと手を乗せてみる。
先輩の手の感触も、残ったまま。

