放ったボールが虹を描けば





「うわ、もうこんな時間」



ふと見た時計はもうすぐで7時。



完全下校時間をとっくに過ぎている。





2人で慌てて下足箱へと走った。



靴を履き替えていると、


「おい、紺野。」


と、先輩に呼ばれた。



「なんですか?」


「お前、家どっちだ」


「門出て左です」




「わかった、送ってく。」



「え!?」



今………送っていくって、


送っていくって言った!?





「……なんだよ、文句あるのか。」



「もっ、文句なんてっ……!

で、でででも、先輩練習で疲れてるんじゃ……!?」



嬉しいけど、先輩に無理をさせるわけにはいかない。



体を壊したら元も子もないし……!



「はぁ?
俺が練習で疲れてるとでも思ってんのか。

何も言わずに送られとけばいいんだよ。」



篠崎先輩は、私の頭をぐしゃぐしゃとなでた。






………………やばい。



嬉しすぎて、なにも考えられないよ。



篠崎先輩が、私を送ってくれるなんて。



一緒に帰れるなんて。



隣を歩けるなんて。




そっと、自分の右腕をなでる。


そこにはいつもの腕章はない。



でも、まだ篠崎先輩のそばにいられるんだ。



「おい、早く帰るぞ」



数メートル先に進んだ先輩が、振り返って私を急かす。



「待ってくださいよー!」



今、人生で一番幸せかもしれない……!