…………緊張するな。
深呼吸して、私はボールを投げた。
放ったボールは、孤を描いて
ゴールに吸い込まれ_________なかった。
ガンっとリングに当たり、跳ね返ってしまう。
「惜しいーー!」
今のは悔しい。
あと少しだったのに!
「惜しくない」
「…………え?」
突然の声に振り向くと、篠崎先輩が真っ直ぐと私を見ている。
もう練習着じゃなくて、制服に着替え終わっている。
「変に力が入りすぎ。
膝がちゃんと使えてない。
リングの中央を意識しろ。」
「み、見てたんですか…っ……!?」
勝手にしろなんて言うから、てっきり帰る用意でもしてるのかと……!
「うるさい。
分かったらもう1回投げてみろ。」
も、もう1回…………!?
えっと………力が入りすぎなのと、膝……と、リングの中央を意識……
緊張はさっきの比なんかじゃないけど、言われたことを意識して、ボールを投げる。
けれど、放ったボールはまたゴールには入らなかった。
「あー…………」
せっかくアドバイスしてくれたのに、はずしちゃった。
「まだまだだな」
そう言って、先輩は転がったボールを拾いに行く。
そして、おもむろに__________
「え…………?」
__________ボールを、投げた。
整ったフォームで放たれたボールは、
リングに当たることなく、音もたてずに網の中をくぐった。

