放ったボールが虹を描けば




けれど、さっきからシュートはあまり入っていない。



篠崎先輩の顔からは、悔しさがにじみでている。



頑張っても、頑張っても



成果が目に見えないって、



一体どんなものなんだろう。



想像するだけで、

涙が出そうになる。




私がこんなに苦しいなら、


篠崎先輩は、どれだけ苦しいんだろう。



私が背負うことって、できるのかな。



先輩の不安を、少しでも減らしたい。



そう思うのは、おこがましいのかな。



ただぼうっと眺めているだけで、とても時間が長く感じた。






しばらくして、篠崎先輩の動きが止まった。




散らばっているボールを、片付け始める。





「篠崎先輩!」



私は扉を開けて、呼びかけた。




「……なんだ、お前か。」




篠崎先輩は一瞬驚いたけれど、私だと気づくと安心したようだった。



先生だったら、怒られるもんね。



「片付け、手伝わせてください」



見てたことバレちゃうかな。



でも、少しでも役に立ちたい。



篠崎先輩は、「あぁ」と短く返事をした。



ボールを、1つずつかごへと運ぶ。



最後の1個になったとき、なんだか体がうずうずしてきた。



「……先輩、1回投げてもいいですか?」



体を動かすのは好きなほうだ。



部室の作業で、体がなまっている感じがする。



「……勝手にしろ」



先輩は素っ気なく返事した。