僕は走っていた。

太陽なんてとっくの昔に沈んで代わりに綺麗な満月からの月明かりが僕を、そしてその周りを照らしていた。周りには多くの木が並び、足元には雑草が生い茂っていた。簡単に言うと森の中にいた。僕は木にぶつからないように、雑草に足を取られないように必死に逃げていた。奴らが後ろに迫っている・・・それは、僕が前いた世界では絶滅した恐竜にには生物。恐竜と言ってもティラノサウルスみたいな巨大なやつではなく、もっと小さいディノニクスみたいな小さい恐竜が5.6匹。ん、恐竜って数える時は匹であってるのかな、まあ、トカゲだからあっているよね。

ギィー、ギギィー、ギィギィー

も、もう追いつかれた!?走りながら後ろを見る。しかし、まだ姿は見えない。いや、いる。近くにいて、鳴き声で連携しようとしているのかも。そう思うな否や僕は限界ギリギリでさらに必死に走る。逃げ始めてどれだけ経っただろう。10分?20分?いや、もっと長いのかもしれない。どうして、あの時、あの卵を盗もうとしたのだろうか・・・恐竜の卵なんて食べれる訳ないのに。そんなことは今はどうでもいい。それより、今はどう逃げるかだ。さらに5分程走ると、とうとう森を抜けた。しかし、目の前にあるのは大きくそして、深い谷だった。下を覗くと川の水がすごい音を立てながら流れている。これ、落ちたら死んじゃうよな〜。はぁ、この世界に来てからまだそんなに経ってないのに。
・・・・・・たしか、えーっと、うーんと、あれ?なんで僕、この世界にいるんだっけ!?

ガサガサ ガサガサ

ばっ!急いで後ろを向く。しかし、後ろにいたのは追いかけられていた恐竜ではなく、白いローブにフードを被った怪しげな魔道士だった。
「ねえ、君はなんでこんなところにいるの?」
フードの奥からとても綺麗で透き通った声が聞こえてきた。そして、魔道士は被っていたフードを脱いだ。そこにあったのは、白く銀色に輝く髪、空のように青く澄んだ瞳。はっきり言って今までにあったことのない美少女だった。「あ、あの、その・・・恐竜といううか魔物に追われてまして・・・・・・」
戸惑いながら理由を話した。
「なぁんだ、君が犯人だったのか」
僕の話を聞いていくうちにその美少女は、納得がいったとらしくクスリと笑った。
「えっと・・・その・・・」
僕が反応に困っているのを見て、
「アハハ、ごめんごめん」
笑っていた顔を引き締めて、
「通りであの子達が暴れてたんだね」
「あの子達って・・・・・・?」
まさかとは思いながらも聞き返す。
「あの子達っていうのは、君が追われていたデスハンターだね。基本的に、人を食べて、巣を荒らした奴は死ぬまで追いかけると言われているらしいよ?ま、私は怖くはないがね、ハハハ」
いやいや、やばいヤツでしょ、それ。それに笑い事じゃないって。そんなことより、
「そ、そのデスハンターは・・・・・・」
「ん?あ、そういえば、追い越してきたから・・・・・・」
そう言って、彼女は辺りを見渡す。
「・・・・・・まだ来ていないみたいだね」
そう、僕を見ていった。その直後、後ろでガサガサと草が揺れた。そこから出てきたのは―――追いかけられていたデスハンターだった!!!
僕はとっさに
「危な――」
そう口にしようとした時に、デスハンターは目の前に立っていた女の子を尻尾ではじき飛ばした。そして、女の子は再び森の中へ。助ける間も与えない見事な早技に驚きながら、僕は焦った。

「どうしよう、僕死んじゃうのかな…」

そう思ったその時