大切な人へ


恐る恐る振り返ると やっぱり先生だ

目が合った瞬間 彼の表情が少し変わる…



「まだいたんだな」

『あの…忘れ物して取りに帰ってきたんです』

とっさに出た苦しい言い訳


「泣くほどあせって?」

…… 。


返す言葉がない
やっぱり会いたくなかった




「少し冷した方がいい」

彼はそう言って連れてきたのは
いつもの科学室の奥の部屋で科学準備室



初めて入る部屋で促されるまま椅子に座る。

「…何があった?」

優しい口調でそう聞きながら
タオルにくるまれた保冷剤を渡してくれる
瞼にあてると冷たくて気持ちいい…


『……思い出し泣き。何も 』

目を冷し 下を向いたまま答えた




「俺ね?今日、式が終わってからさっきまで
ずっとここで仕事してたんだ」

? 何の話しかわからない

「ここの窓の下には、中庭のベンチが見える」





うそ…



先生には見られたくなかった…



「話は聞こえないけどね…ごめん。」

そう言って足音が近づき隣の椅子に座った。


「それが原因?」




黙りこむ私からまた足音が離れていった…