顔が整っているのはもちろんだけど、赤い背景に映える真っ黒な王子様の服を着ている。


それがどこか落ち着いた印象を見せた。


白雪はいつも白い王子様の服だから、この人は正反対だな。


てか、この人白雪に似てるような…?


私が凝視していると、男の人は怪訝そうな顔をした。


「あ、ごめんなさい…まじまじと見ちゃって…」


男の人はその言葉を無視して私に手を伸ばす。


なに…?何されるの!?


男の人はそのまま私の頬…ではなく、その横にいたスノーに触れた。


「シロが来てるのか…」


そう言ってスノーを指で撫でる。


私が撫でられている訳じゃないのに、なんだかくすぐったい気分になった。


「こんな所で何してるのぉ?クロと…キャサリン?」


今度はリンゴの木の上から聞き覚えのある声がした。


この喋り方と声は…チェシャさんだ。


上を見上げると、彼女は木の枝にちょこんと座っている。


私と目が合い、嬉しそうにニタァと笑う。


「やっぱりキャサリンだぁ。」


ゾクゾクッ


私はその笑顔に何故か寒気がした。


何かチェシャさんって…食べられちゃいそうな、危険な感じがする…!


「チェシャ。危ないから降りて来て。」


男の人がそう言うと、チェシャさんは木から飛び降りた。


「クロが女と話すなんて珍しいねぇ?」


そして、猫が飼い主にするように、"クロ"と呼ばれた男の人にスリスリと体を擦り付けた。


しかし男の人はそれをうっとおしそうに払い退ける。


「人が見てる。」


「なあにぃ?その言い方ぁ。」


2人だけで進んでいく会話は、なんだかカップルのようだ。


私、お邪魔みたいだなあ…


そう思い、お暇しようとしたら誰かに腕を掴まれた。


振り返るとクロさんが私の腕を掴んでいる。


「どこに行く?」


「え?連れを探しに…?」


「あまり1人で歩き回らない方がいい。」


「でも」


「それに…シロならもうすぐ来ると思うから。」


この人さっきも言ってたけど、シロって誰…?


そんな事を考えた時、また誰かが私の腕を掴んだ。


クロさんが掴んでいるのと同じ腕を。


「こいつから離れてくんねえ?」


「白雪!」